PCと液タブがぶっ壊れやる事が無くなった原作者、
ボケナスアホ太郎氏が仕事中iphoneで紡ぎ出した長編ノベル。
卓士達に迫る"見えざる敵"。
その正体を追う者、追われれ者。
今、秘められた聖戦の幕が上がる。
◇序章 -プロローグ―
「雲になりてえ…」
黒木卓士(25)は最大まで後ろに倒した運転席に背を預け、そう呟くと、
フロントガラス越しに広がる青空に左手を伸ばす。
痛すぎる。自分をアニメの主人公か何かだと思っているのだろうか。何が雲だよ。キモ
「何でこんな辛辣なんだよ地の文」
そう悪態をつくと卓士は静かに目を閉じた。
そう。ここは新宿中央公園前に停められた卓士の車の中であり、今は12時。お昼時である。
8時から始業し、4時間程運転していた彼は少しばかり休憩を取りたくなったのだ。
また、小腹も空いてきたのでその辺りで昆虫でも採って食おうと考えていたそんな次第なのであった。
「そんな次第な訳ねえだろ」
まだ終業までは14時間程ある。貧乏な卓士はこうして安価で栄養価の高い食料を取り、
日々の長い仕事の活力にしているのだ。
「してねえよ」
さて、ここで聡明な読者諸兄はお気づきだろう。
長い勤務時間、業務での運転、車中での休憩…
そう。彼の仕事とは―――
「うん」
―――ウーバイーツである。
「タクシードライバーだよ」
◇第一章
―コンコン。
運転席のドアを下品に叩くノック音。
「ん」
卓士は運転席のリクライニングを元に戻し、ノックの主を確認した。
「よっ」
ドンキホーテ前のヤンキーの様に下品な金髪。ヘラヘラと軽薄そうな表情。身体中から漂う鬼の様な
ヤニ臭。そう、卓士の同期の楠原黄助(24)である。
「地の文酷すぎじゃね?」
「俺もさっきそう思ってたんだよ」
車を降りると卓士はキスケと歩き出した。
西新宿という高所得層のビジネスマン達が闊歩する瀟酒なオフィス街を、それに似つかわしく無い
薄汚れたタクシードライバー二人がノピヌピと練り歩く。
一体何の目的で集合したのだろうか?自販機下の小銭漁りだろうか?
「滅茶苦茶言ってくんじゃねえか」
「だろ?参るね」
いや、違う。2人は仲が良く、昼時や夕飯時に近くのエリアに居る時はSNSで連絡して一緒に
ご飯を食べるなどはよくある事なのであった。
今日はたまたま昼時に2人とも西新宿付近にいたという事だろう。
「卓士何食いたい?中華?」
「あーなんか…今日は…中華っちゅうか…」
「ガハハ!!!ガハハ!!!」
低脳なギャグ(こんなもので爆笑できるのはエテ公くらいのものである)を交えつつ、
二人が辿り着いたのはサイゼリヤであった。
こいつらは何だかんだ言いつつ9割型サイゼリヤに落ち着く。思考停止しているのだ。
―いらっしゃいませ
「3名です。後でもう一人来るので」
―畏まりました。あちらのボックス席へご案内致します。
店員に少し広めのボックス席へ案内されるカス二人。
それにしても、3名?聞き間違いだろうか?こんな席に他に誰が来ると言うのだろうか。
それともこれは3名と言っておけばボックス席に案内され、広い席を二人で自由に使えるという姑息な戦略だろうか?迷惑も良いところである。
「穿った考えすぎるだろ」
「あーやべ、さっき外居る時ヤニっとけば良かったわ」
「あー、まぁ奴の前でヤニ吸うとうるさいからね」
奴?ヤニにうるさい… まさか…
―カランコロン。
その時。ドアベルの軽快な音と共にサイゼリヤなどには似つかわしくないスーツ姿の美少女が
入店してきた。
店員に何かを伝え、キョキョロロと店内を見渡し、こちらのボックス席側に目を向けると…
ペアアアと愛くるしい笑顔を見せブミブミと小走りで駆けてきた。
「待った?」
「いや、まったりしてた」
「え?!それ待ったの?待ってないの?」
卓士の糞くだらんギャグにも真面目にツッコミを入れる美少女。
落ち着いたブラウンのショートカットに整った顔立ち。身長は小さいながらもモデル体型で、ピシシとスーツを着こなす上品さがある。主張しすぎないながらも確かに存在感を放つ爽やかなコロンの香り。なんか可愛いヘアピン。
そう。卓士の同期、美少女タクシードライバー海野朱音(27)である。
「照れる〜」
「何であかねちゃんには激甘なんだよ」
「さっき俺らに見せた殺気が無いよね。さっきだけに」
「ガハハ!!!ガハハ!!!ガハハ!!!」
「コロコロ」
卓士の糞つまらんギャグにもコロコロと笑うあかね。可愛いのである。
それに比べてキスケの下品な笑い方と来たら死んでほしいのである。
「お昼時で新宿近くに皆居るなんて珍しいね!」
あかねもキスケ同様、卓士の同期で仲が良く、食事によく誘われるメンバーの一人である。
卓士の周りには基本的にアホみたいな馬鹿男、類友しか居ないのだが、あかねちゃんは別である。
掃き溜めに鶴とはこの事である。
「そうだね。あかねちゃんは何食べる?」
「私はねえ、えびドリアにする!」
「そっか。キスケは何食べたい?」
「何食べたいと聞かれたら… ヤニ食べたい!なーんてな!ガハハ!!!ガハハ!!!」
「ガハハ!!!ガハハ!!!」
「コロコロ」
つまんねえのである。最近卓士の糞つまらんダジャレみたいな喋り方が周囲に伝染していて困るの
である。いつか私の天使であるあかねちゃんにも伝染しないか心配なのである。
「みどりんは何食べる?」
私?私はスパイシートマトハンバーグ
「これお前かよ!!!!!!!!!」
「やけに俺と卓士に辛辣だと思ったんだよ。オイ!どこにいやがるブス」
キスケが立ち上がり周囲を睨め付けるが私の姿を捉える事は出来ない。滑稽である。
「である。じゃないんだよ」
「コイツリアルだとコミュ障の分際で地の文だとよく喋んなあ」
「みどりんもコーヒーいる?」
うん
「じゃあ注文とっちゃうね!あ、店員さん!」
あかねちゃんが声優ばりの美声で通りがかった店員に声をかける。
そうして今日の天を裂く時間(ランチタイム)ははゃじまったのである。
「噛んでんじゃねえよ」
◇第二章
「午前中売り上げいくら?」
あかねちゃんがモモググとえドビリアを頬張りながら尋ねる。可愛い。
やはりタクシードライバーが仕事中に集まる時、定番の話題はこれだ。
「4万くらい」
「え!ブっそぉ」
キスケの数字にドリアを噴き出して驚くあかねちゃん。無理もない。
午前中だけで4万稼げるのは相当売り上げが高いのだ。
キスケは性格はクソッタレだが営業の成績だけは優秀なのである。
そんな事はどうでも良いがあかねちゃんのほっぺにえびドリアのエビがついてるのである🤭
忍者ハットリくんみたいである🤭可愛いのである🤭
「卓士は?」
「580円」
「ぶゃぃーーー笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑笑」
それに対し卓士の売り上げはカスである。これは4時間あってお客さんを1人しか乗せていない
計算である。こんな事で生活ができているのだろうか。
卓士のテーブルに昆虫と水道水しか無い事は、まるでそのまま彼の財布の貧相さを示すかの
ようだった。
「オイ!ナポリタンもあるだろうが」
「あかねちゃんはいくらよ?」
「私?2万5千くらい〜」
あかねちゃんが2万5千円くらいなら私400体くらい買っちゃうのである!
それで部屋に400体置いてねえ、あかね布団にして寝るのである。
で起きたらあかねジェンガで遊んで
「うるせえよ」
「みどりんは午前中いくら?」
私?私は…8千円とか…そのくらい…
「はっ!!!ショッボ俺の5分の1じゃねーか」
うるさい
「みどりん。もう少し頑張った方が良いよ」
うるさい 580円の奴にとやかく言われたくないよ
「お客様、もう少し効率よく稼いだ方が宜しいかと…」
誰この人 なんで私サイゼの店員に説教されてるの?
「そもそもみどりんは売り上げ以前に運転がね…」
「道も間違えるし…」
「接客も…」
「髪質も…」
何この客達?!!!読者?!?うるさいよ!!!!!!!!!!!!!!!
もおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
あかね「みどりん!!!!!!!!!みどりん……?」
卓士「消えた…」
キスケ「マジ?」
卓士「見ろキスケ。「」の前に名前が出て誰が喋ってるか分かりやすくなってるだろ?」
キスケ「マジだ」
卓士「これはつまり、地の文であるみどりんが消滅した事によって第三者視点で誰が喋ってるか
説明できなくなったから仕方なくこういった処置がされているんだ。」
キスケ「マジか」
あかね「みどりんはどこに行っちゃったの?」
卓士「わからない…。だが、強いて言うなら……天、かな。」
あかね「天…?」
卓士「ああ…。地の文なんて制約から解き放たれて、自由な空へ…。
地から天へ飛び立って行ったのさ。あの雲のように…」
あかね「無理やり冒頭のキーワードでまとめようとしてない?」
キスケ「食い逃げだろこれ」
終